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本プロジェクトについて


「アジア歴史資料デジタルアーカイブ」および「日本語日本文学デジタルアーカイブ」について

日本大学文理学部情報科学研究所長 戸田誠之助

日本大学文理学部の情報科学研究所では、「アジア歴史資料」と「日本語日本文学」をめぐる2つのデジタルアーカイブを公開することとなりました。

このデジタルアーカイブの構築は、文部科学省より2003年度から2007年度にかけて「私立大学学術フロンティア推進事業」の選定を受けた「デジタルアーカイブ・インフラストラクチャの構築と高度利用」(日本大学文理学部情報科学研究所)のプロジェクトのひとつとして進められてきました。

「デジタルアーカイブ・インフラストラクチャの構築と高度利用」という研究プロジェクトは、情報科学研究所長の戸田を中心に、スタート時点で国内外合わせて89名(うち,文理学部研究者数44名)の参加メンバーを擁し、歴史学・中国語学・心理学・地理学・脳生理学・情報工学を横断した大型プロジェクトとして開始されました。なかでも今回のアーカイブとなる資料の調査研究とデジタル化を担ったのが、「中国文書等資料プロジェクト」と「日本語貴重資料プロジェクト」というサブプロジェクトでした。前者は、史学科教授の加藤直人をプロジェクトリーダーとして、史学科の専任教員2名をふくめた研究者8名、ポストドクター1名によって完了しました。後者は、国文学科教授の紅野謙介をリーダーとして、国文学科の専任教員9名をふくめた研究者14名によって開始され、最終的にはポストドクターをふくめ総勢23名の研究者が関わって推進してきたものです。

また、これらのデジタルアーカイブのインフラストラクチャの構築において、「基盤システムの実現、高次機能の利用」をめぐるサブプロジェクトが領域横断的に関わり、土台を支えました。こちらは戸田をリーダーとして、情報システム解析学科の谷聖一教授、12名の外部の研究者、3名のポストドクターによって進められました。

今回、このサイトは、それらの研究成果の一端を「アジア歴史資料デジタルアーカイブ」および「日本語日本文学デジタルアーカイブ」としてあらためて公開するものです。いまやデジタルアーカイブは資料をデジタル化して公開すればいいというレベルではなくなってきています。資料をどのように提示し、どのような検索方法を示すか。こうしたこともデジタルアーカイブの研究の水準を引き上げることにつながっていると思われます。

それとともにデジタルアーカイブに完成形はありません。利用者の声によって絶えず変化する可能性があります。多くの方々に利用していただき、さらにその声を、より質の高いデジタルアーカイブへと生かしていきたいと考えています。ぜひ、デジタルアーカイブの回廊をお楽しみください。

アジア歴史資料デジタルアーカイブについて

「アジア歴史資料デジタルアーカイブ」は、日本大学文理学部に所属する研究者を中心に、他大学の研究者も含めた、アジア史に関連する研究を行うスタッフによって、日本大学および他機関が所蔵するアジア史に関連する貴重な資料を調査・分析し、研究してきた成果をもとに、そのデジタルアーカイブを構築したものです。

このプロジェクトは、本HP別項戸田氏記述にある学術フロンティア事業の「中国文書等資料班」での研究を前提に発足したものです。学術フロンティアでの同班の研究目的は、大きく分けて、(1)劣化が進む資料のデジタル化による資料の長期保存環境の整備、(2)大量な資料を多面的かつ高速で検索・提示するシステムの構築、(3)デジタル化した資料に関連する統計データをはじめとする各種データベースの構築、の3つでした。この目的の下、「鑲紅旗档」(財団法人東洋文庫所蔵資料)、「内国史院档」、「清国漂流図」(早稲田大学図書館所属資料)、「上海絵葉書(甫喜山コレクション)」、「ハルビン絵葉書(黒崎コレクション)」、「奉天公報」、「日本戦前期在大連日本人刊行新聞」、「日本戦前期中国関係ポスター・写真」、等々、のデジタルアーカイブと、「日本戦前期『満洲』関係統計および人物」のデータベースが、プロジェクト期間中に構築されました。

この過程で我々が痛感したのが、デジタルアーカイブを単なる資料検索の高速化や閲覧上の利便性向上のシステムに止めず、当該問題が包含する多面性や可能性、さらには他の諸事象・諸主体との関連性を、「発見」していく上での「新たな資料空間」とでも呼び得るものにしていけないかということでした。別言すれば、既知の対象を効率よく言わばピンポイント的に検索・摘出するというシステムに止まらない、ある対象に関する既得知識を「揺らし」、その対象を改めて茫漠な可能性の海とでも言い得る領域に置き直すことで、対象理解に対する新たな認識の創出を喚起し得るデジタルアーカイブの構築は出来ないかということでした。それは、新たな知的空間の創出への希求であると同時に、様々なテロに象徴される、他者に対する単純化を伴い惹起される他者への蔑視・差別と暴力の応酬が改めて顕在化しつつあるかにみえる現代世界における、デジタルアーカイブの今日的意義から想起された問題意識でもありました。

この問題意識の下、私達は、2008年度より情報工学を中心とする基盤システム研究グループと提携しつつ本プロジェクトを立ち上げました。その際、当面の研究対象資料として、一つの資料内に個々の事象や主体が明示されると同時に、その相互連関により統一的に構成される当該資料の全体性も一目の下に提示される — その意味で前述した当該問題が包含する多面性や可能性の喚起が相対的容易と予想された — 画像資料を選択し、まずは「清国漂流図」と「ハルビン絵葉書」のデジタルアーカイブの構築から着手しました。その後、様々な機会、例えば「ハルビン絵葉書」に関しては、2008年11月の「JAPEX'08:満洲東北切手展」(日本郵趣協会主催、日本大学文理学部情報科学研究所後援)、2009年10月の「写された満洲:デジタルアーカイブから甦る哈爾濱都市空間」(日本大学文理学部・同資料館主催、同情報科学研究所協力)などの公開展示を通じてアーカイブの改良を図り、そこでの成果をふまえて今回の公開に至りました。

言うまでもなく、現在のアーカイブは発展途上のものであり、それぞれの資料の特性をふまえつつ、今後、様々な形で改善がおこなわれていくこととなります。皆様には、この点をふまえつつ、このデジタルアーカイブを、ご利用いただければ幸いです。

最後に、このプロジェクトの推進にあたって、日本大学文理学部図書館、日本大学文理学部資料館、早稲田大学図書館、財団法人東洋文庫、黒崎裕康氏、甫喜山精治氏から、ご協力・ご支援をいただきました。厚くお礼申し上げます。

プロジェクト・メンバー

  • ・加藤直人(文理学部史学科教授・プロジェクトリーダー)
  • ・土屋好古(文理学部史学科教授)
  • ・松重充浩(文理学部史学科教授)
  • ・粕谷 元(文理学部史学科准教授)
  • ・山口 守(文理学部中国語・中国文化学科教授)
  • ・中見立夫(東京外語国語大学AA研教授)
  • ・江夏由樹(一橋大学大学院経済学研究科教授)
  • ・上田 信(立教大学文学部教授)
  • ・柳澤 明(早稲田大学文学学術院教授)
  • ・千葉正史(明治学院大学等非常勤講師)
  • ・林幸司(文理学部等非常勤講師)
  • ・大平知香(文理学部資料館学芸員)
  • ・大貫みあき(文理学部臨時職員)

*肩書きは2009年の時点のものです。

日本語日本文学デジタルアーカイブについて

「日本語日本文学デジタルアーカイブ」は、日本大学文理学部国文学科に所属する研究者を中心とするスタッフによって、日本大学が所蔵する日本語日本文学に関連する貴重な資料を調査・分析し、研究してきた結果をもとに、そのデジタルアーカイブを構築したものです。

このプロジェクトの発足にあたって、私たちが研究対象としてとりあげたのは、日本大学総合学術情報センターに所蔵されている「明月記」「大斎院前の御集」「落窪物語絵巻」「倭玉篇」「喜多村緑郎文庫」の5つでした。これまで私たちは、2001年10月と2002年5月の二度にわたり、日本大学所蔵の貴重書展覧会を企画・実行してきましたが、その過程であらためて研究上の価値を再確認したのが上記の資料でした。まず、これらの資料を手始めにデジタル画像に変換し、それをデータベース化することによって、資料への新たなアプローチの探究、総体としての資料を情報化することによって従来と異なる資料価値の発見をうながす環境を用意することを目的として、プロジェクトは開始されました。

同じく貴重資料とは言いながらも、中世の漢文で書かれた日記の断片、複数の書写になる中古私家集、近世につくられた奈良絵巻、中世の古辞書、近代の新派俳優・演出家による台本記録類というように、多種多様、資料の特徴も性格もまったく異なるものであり、データベース化するにあたって、どのような検索条件をつけるかも統一困難な手探り状態でした。しかし、情報工学を中心とする基盤システム研究グループと連携し、共同研究を進めるなかで、次第にその資料の多様性を生かしていくことが重要であり、いたずらに統一しないことこそ、デジタル資料の提供にあたって肝要であることを認識するに至りました。

したがって、このデジタルアーカイブでは、資料ごとに検索条件が異なっていきます。それぞれの対象の違いをご考慮いただきながら、ご利用いただければ幸いです。

最後に、このプロジェクトの推進にあたって、日本大学総合学術情報センター、とりわけその学術情報課のご協力・ご支援をいただきました。厚く御礼申し上げます。

プロジェクト・メンバー

  • ・紅野謙介(文理学部国文学科教授・プロジェクトリーダー)
  • ・阿部好臣(文理学部国文学科教授)
  • ・荻野綱男(文理学部国文学科教授)
  • ・小平麻衣子(文理学部国文学科教授)
  • ・小田切文洋(国際関係学部教授)
  • ・梶川信行(文理学部国文学科教授)
  • ・粕谷宏紀(文理学部国文学科元教授)
  • ・金子明雄(文理学部国文学科教授)
  • ・唐澤正実(経済学部教授)
  • ・久保木秀夫(国文学研究資料館助教)
  • ・鈴木功眞(文理学部国文学科専任講師)
  • ・曾根博義(文理学部国文学科教授)
  • ・竹下義人(文理学部国文学科教授)
  • ・田中ゆかり(文理学部国文学科教授)
  • ・谷口郁生(文理学部コンピュータセンター専任講師)
  • ・千葉篤胤(日本大学鶴ヶ丘高等学校教諭)
  • ・辻 勝美(文理学部国文学科教授)
  • ・那須陽一郎(日本大学藤沢高等学校非常勤講師)
  • ・藤平 泉(文理学部国文学科教授)
  • ・毒島雄二(文理学部コンピュータセンター専任講師)
  • ・松田行子(文理学部国文学科助手)
  • ・森井マスミ(愛知淑徳大学文化創造学部講師)
  • ・山本まり子(文理学部国文学科元助手・現 非常勤講師)

*肩書きは2009年の時点での経歴を入れました。